辰巳ダム 放流設備工事
御発注者 | 石川県 辰巳ダム建設事務所様 |
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施工場所 | 石川県金沢市相合谷町~上辰巳町地内 |
工事期間 | 平成20年9月~平成21年9月 |
工事番号 | 2号ゲート:48G-1035 8号ゲート:48G-1044 |
[はじめに]
辰巳ダムは、金沢市内を流れる二級河川犀川の中流部に建設が進められている治水ダムです。ダム形式は重力式コンクリートダムで、放流用の穴を川床付近に設け通常時は水を貯留しない流水型dryダムと呼ばれる構造です。この構造のダムは、全国でも施工例は少なく、県が施工する補助ダムでは、島根県の益田川ダムに次ぎ2例目の工事です。
当社は、ダム下部の下段常用洪水吐き水路と副ダムのスリットのコンクリート面の摩耗対策として、ステンレス鋼板でライニングする工事を受注し、平成21年9月に据付工事を終えました。
[特 徴]
治水専用ダム(いわゆる穴あきダム)〔DRY DAM〕
いわゆる穴あきダムは、ダムの持つ様々な機能のうち治水機能に特化した目的で建設される、常時水を貯める必要のないダムの一形態です。
※ 国土交通省HPより引用しています。
■ 従来型ダムとの構造比較
従来型 多目的ダム | 洪水調整専用流水型ダム[DRY DAM] |
■ 利 点
1.下流沿川の洪水被害を軽減
洪水時にはダムのせきあげ効果により、一時的に洪水を貯留し洪水調整を行うため、下流沿川の洪水被害を軽減します。
2.自然に近い物質循環の維持
通常時はダムに水を貯めないことや、河床近くに洪水吐(穴)を設置することにより、貯水池内でも普通の川の状態が維持され、ダムの上下流における水循環、土砂循環、魚類の移動など、自然に近い物質循環が維持されます。
3.建設コストの縮減
貯水池に堆積する土砂の量が軽減できる(通常は概ね100年間の堆積量を貯水池内に予め確保)ことにより、ダム提体をコンパクトにでき、建設コストの縮減が可能となります。
[辰巳ダム諸元]
ダムの型式 | 重量式コンクリ-トダム |
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堤 高 | 51.0m |
堤頂長 | 195.0m |
堤頂標高 | EL 137.0m |
上流面勾配 | 鉛直 |
(フィレット部) | ( 1 : 0.50 ) |
下流面勾配 | 1 : 0.74 |
下段常用洪水吐き | 2.900m×2.900m×2条 |
集水面積 | 77.10km2 |
湛水面積 | 0.42km2 |
総貯水容量 | 6,000,000m3 |
有効貯水容量 | 5,800,000m3 |
洪水調節容量 | 5,800,000m3 |
堆砂容量 | 200,000m3 |
設計洪水位 | EL 135.5m |
サ-チャ-ジ水位 | EL 132.0m |
[施工内容]
1.鋼製ライニング施工箇所
・ 下段常用洪水吐き部(呑口部⇒上流開水路部⇒下流開水路部)各1条
・ 副ダム左右スリット部 各1条
※ 縦断面図、平面図の斜線(ハッチング)部が鋼製ライニング施工箇所です。
2.下段常用洪水吐き部の鋼製ナイフエッジ 各1基
3.下段常用洪水吐き上流 上流開水路部の試験湛水用ゲート用戸当り金物 各1門
[設備仕様]
■ 鋼製ライニング
形 式 | 鋼製ライニング |
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補強形式 | ジベルスティフナ方式 |
設計荷重 | 内圧:コンクリートで負担するため考慮しない 外圧:コンクリート打設圧、グラウト圧 |
主要材質 | ライニング:ステンレス鋼板(SUS304) スティフナ:一般構造用圧延鋼材(SS400) ジベル:異形棒鋼(SD295A) |
■ 鋼製ナイフエッジ ※
形 式 | ステンレス鋼製ナイフエッジ |
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純径間×有効高 | 2.900m×1.400m |
主要材質 | ステンレス鋼板(SUS304) |
※ ナイフエッジとは?
ナイフエッジとは、洪水時の水の流れを切る構造形状を指すことばです。その名の如く、ナイフのエッジ(鋭い刃先)形状とすることで、ここを通過する水をスパッと切ることにより、下流の空間部の圧力変動を抑える役目をさせます。
本工事におけるナイフエッジの形状は、右図の通りです。
[状況写真]